選挙前に見る最高裁判事の判決|特例法の性別変更手術要件は違憲

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日丸と申します。選挙前に不祥事の詳細を思い出すため個人的に整理しています。

いつも大多数の方がほぼ棄権状態で投票しているであろう最高裁判事の国民審査。それぞれの判決を自分が思い出せるよう整理します。


修正履歴
20231107 初版。 アーカイブ

最高裁判事の国民審査制度

既に任命されている最高裁判所の裁判官が、その職責にふさわしい者かどうかを国民が審査する解職の制度であり、国民主権の観点から重要な意義を持つものです。

最高裁判所の裁判官は任命された後に初めて行われる衆議院議員総選挙の投票日に国民審査を受け、この審査の日から10年を経過した後に初めて行われる衆議院議員総選挙の投票日に更に審査を受けます(その後も同様)。

引用:総務省~国民審査|制度のポイントを知ろう!

有権者は、辞めさせたい裁判官の欄に「×」を付けることで、選挙時に不信任の意思を表します。「×」記載の票数が空欄票数を超えた場合、その裁判官は罷免されるルールです。

つまり、有効票の過半数が「×」を付けないと罷免できない、非常に甘ったれた制度とも言えます。

性別変更手術要件は違憲とした最高裁判決

櫻井よしこ氏の性別変更手術要件発言~2023年10月報道

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性別変更手術要件が違憲
日付 アーカイブ
2023年10月25日 産経「15人で国の根幹変えてよいのか」ジャーナリストの櫻井よしこ氏、性別変更手術要件の違憲決定に

最高裁判決は「性別変更に生殖機能をなくす手術が必要だとする性同一性障害特例法の規定は違憲」。

櫻井よしこ氏の主張は「反対する性同一性障害当事者の多くの意見を無視」。「性同一性障害特例法を守る会」の美山みどり代表らは「手術せずに女性に成れるのはよくない」。

最後の文章「最高裁の裁判官は国会同意人事にすべきだ。」てのは、指名・任命権を現在の“内閣”でなく“国会”へとのことのようだ。三権分立崩すって話ではない様子。俺も勘違いしたが。

俺みたいな愚民から見ると、手術を条件にしないなら俺も女風呂入れると思ってしまいます。

判決文~性別変更特例法の手術要否判断

以下が判決文。

主 文
原決定を破棄する。
本件を広島高等裁判所に差し戻す。

理 由
抗告代理人𠮷田昌史、同南和行の抗告理由について

第1 事案の概要等
1 本件は、生物学的な性別は男性であるが心理的な性別は女性である抗告人が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例法」という。)3条1項の規定に基づき、性別の取扱いの変更の審判を申し立てた事案である。

2 特例法は、2条において、性同一性障害者について、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものと定義し(以下、「性同一性障害者」というときは、この定義によるものをいう。)、3条1項において、家庭裁判所は、性同一性障害者であって同項各号のいずれにも該当するものについて、性別の取扱いの変更の審判(以下「性別変更審判」という。)をすることができる旨を規定している。そして、特例法3条1項4号(以下「本件規定」という。)は、「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。」と規定するところ、本件規定に該当するためには、抗がん剤の投与等によって生殖腺の機能全般が永続的に令和2年(ク)第993号 性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件令和5年10月25日 大法廷決定失われているなどの事情のない限り生殖腺除去手術(内性器である精巣又は卵巣の摘出術)を受ける必要があると解される。原審の確定した事実によれば、抗告人は、生殖腺除去手術を受けておらず、抗告人について上記事情があることもうかがわれない。

3 原審は、抗告人について、性同一性障害者であって、特例法3条1項1号から3号までにはいずれも該当するものの、本件規定に該当するものではないとした上で、本件規定は、性別変更審判を受けた者について変更前の性別の生殖機能により子が生まれることがあれば、社会に混乱を生じさせかねないなどの配慮に基づくものと解されるところ、その制約の態様等には相当性があり、憲法13条及び14条1項に違反するものとはいえないとして、本件申立てを却下すべきものとした。なお、原審は、「その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。」と規定する特例法3条1項5号(以下「5号規定」という。)に関する抗告人の主張、すなわち、抗告人は5号規定に該当するものであり、仮に該当するものではないとしても5号規定は憲法13条、14条1項に違反する旨の主張については、判断していない。

4 論旨は、本件規定は、憲法13条、14条1項に違反し、無効であるというものである。

第2 本件規定の憲法13条適合性について

1 本件に関連する事実等の概要は、次のとおりである。
(1)性同一性障害について
性同一性障害とは、生物学的な性別と心理的な性別が不一致である状態をいい、医学的な観点からの治療を要するものである。今日では、心理的な性別は自己の意思によって左右することができないとの理解の下に、心理的な性別を生物学的な性別に合わせることを目的とする治療は行われておらず、性同一性障害を有する者の社会適応度を高めて生活の質を向上させることを目的として精神科領域の治療や身体的治療が行われている。
性同一性障害を有する者については、治療を受けるなどして、性自認に従って社会生活を送るようになっても、法令の規定の適用の前提となる戸籍上の性別(以下「法的性別」という。)が生物学的な性別によっているために、就職等の場面で性同一性障害を有することを明らかにせざるを得ない状況が生じたり、性自認に従った社会生活上の取扱いを受けられなかったりするなどの社会的な不利益を受けているとされている。

(2)特例法の制定の背景等
ア 性同一性障害については、上記のとおり、性同一性障害を有する者の生活の質の向上を目的とした治療が行われているところ、特例法が制定された平成15年7月当時は、日本精神神経学会の定めた「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」(以下、単に「ガイドライン」という。)第2版に沿って、いわゆる段階的治療という考え方に基づく治療が行われていた。段階的治療とは、原則として、第1段階では精神的サポート等の精神科領域の治療を行い、次に身体的治療として、第2段階ではホルモン療法ないし乳房切除術を、第3段階では性別適合手術(生殖腺除去手術、外性器の除去術又は外性器の形成術等)を行うという3段階の手順を踏んで治療を進める考え方であり、性別適合手術は、第2段階を経てもなお自己の生物学的な性別による身体的特徴に対する強い不快感又は嫌悪感が持続し、社会生活上の不都合を感じている者に対する最終段階の治療とされていた。なお、第1段階及び第2段階の各治療は必ずしも次の段階に移行することにより終了するものではなく、精神科領域の治療やホルモン療法は第3段階を経た後も継続するものとして予定されていた。
また、ガイドライン第2版においては、第3段階を経た性同一性障害を有する者について、法的性別の変更がされなければ、社会生活上大きな障害になるものとされていた。
イ 国会での審議における法案の提出理由等からすると、特例法は、性同一性障害が世界保健機関の策定に係るICD(国際疾病分類)第10回改訂版等にも掲載された医学的疾患であるとの理解を前提として、性同一性障害を有する者が、段階的治療の第3段階を経ることにより医学的に必要な治療を受けた上で、自己の性自認に従って社会生活を営んでいるにもかかわらず、法的性別が生物学的な性別のままであることにより社会生活上の様々な問題を抱えている状況にあることに鑑み、一定の要件を満たすことで性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けることを可能にし、治療の効果を高め、社会的な不利益を解消するために制定されたものと解される。
ウ 特例法には、その立案段階における議論を踏まえ、附則において、性別変更審判を受けることができる性同一性障害者の範囲等については、特例法の施行の状況、性同一性障害者等を取り巻く社会的環境の変化等を勘案して検討が加えられ、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとする旨の規定が置かれた。
そして、特例法3条1項3号は、特例法の制定時には「現に子がいないこと。」と規定されていたが、平成20年法律第70号による改正(以下「平成20年改正」という。)によって、「現に未成年の子がいないこと。」に改められた。

(3)性同一性障害に関する医学的知見の進展
ア 性同一性障害の治療は、特例法の制定当時は段階的治療という考え方に基づいていたところ、その後、臨床経験を踏まえた専門的な検討等を経てガイドラインの見直しがされ、平成18年1月に提示された第3版では、性同一性障害を有する者の示す症状は多様であり、どのような身体的治療が必要であるかは患者によって異なるとして、段階的治療という考え方は採られなくなった。具体的には、性同一性障害を有する者について、まず精神科領域の治療を行うことは異ならないものの、身体的治療を要する場合には、ホルモン療法、乳房切除術、生殖腺除去手術、外性器の除去術又は外性器の形成術等のいずれか、あるいは、その全てをどのような順序でも選択できるものと改められた。
イ ICD第10回改訂版において、性同一性障害は「精神および行動の障害」の一つに分類されていた。その後、「障害」との位置付けは不適切であるとの指摘がされたため、2019年(令和元年)5月に承認された第11回改訂版において、性同一性障害は「性の健康に関する状態」に分類されるようになり、それに伴い名称が「性同一性障害」から「性別不合」に変更された。

(4)性同一性障害を有する者を取り巻く社会状況等
平成16年7月の特例法の施行から現在までに、1万人を超える者が性別変更審判を受けるに至っている。
この間、国においては、法務省が、平成16年以降、性同一性障害を理由とする偏見等の解消を掲げて人権啓発活動を行い、文部科学省は、平成22年以降、学校教育の現場において性同一性障害を有する児童生徒の心情等に十分配慮した対応がされるよう、各教育委員会等にその旨を要請する通知を発出したり、教職員向けのマニュアルの作成、配布を行ったりしており、厚生労働省も、平成28年、労働者を募集する際の採用選考の基準において性的マイノリティを排除しないよう事業主に求めるなどの取組をしてきた。令和5年6月には、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に寛容な社会の実現に資することを目的として、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」が制定された。また、地方公共団体においては、平成25年に、東京都文京区で性自認等を理由とする差別的な取扱いその他の性別に起因する人権侵害を行ってはならない旨の条項を含む条例が制定されて以降、相当数の地方公共団体の条例において同趣旨の条項が設けられている。さらに、一般社団法人日本経済団体連合会は、平成29年、企業において、性同一性障害を有する者を含むいわゆるLGBTへの適切な理解を促し、その存在を受容することに向けた取組を行っていくことが急務である旨の提言をしたほか、令和2年以降、一部の女子大学において法的性別は男性であるが心理的な性別は女性である学生が受け入れられるなどしている。また、特例法の制定当時、法令上の性別の取扱いを変更するための手続を設けている国の大多数は、生殖能力の喪失を上記の変更のための要件としていたが、その後、生殖能力の喪失を要件とすることについて、2014年(平成26年)に世界保健機関等が反対する旨の共同声明を発し、また、2017年(平成29年)に欧州人権裁判所が欧州人権条約に違反する旨の判決をしたことなどから、現在では、欧米諸国を中心に、生殖能力の喪失を要件としない国が増加し、相当数に及んでいる。

2 以上を踏まえ、本件規定の憲法13条適合性について検討する。
(1)憲法13条は、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と規定しているところ、自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由(以下、単に「身体への侵襲を受けない自由」という。)が、人格的生存に関わる重要な権利として、同条によって保障されていることは明らかである。
生殖腺除去手術は、精巣又は卵巣を摘出する手術であり、生命又は身体に対する危険を伴い不可逆的な結果をもたらす身体への強度な侵襲であるから、このような生殖腺除去手術を受けることが強制される場合には、身体への侵襲を受けない自由に対する重大な制約に当たるというべきである。
ところで、本件規定は、性同一性障害を有する者のうち自らの選択により性別変更審判を求める者について、原則として生殖腺除去手術を受けることを前提とする要件を課すにとどまるものであり、性同一性障害を有する者一般に対して同手術を受けることを直接的に強制するものではない。しかしながら、本件規定は、性同一性障害の治療としては生殖腺除去手術を要しない性同一性障害者に対しても、性別変更審判を受けるためには、原則として同手術を受けることを要求するものということができる。
他方で、性同一性障害者がその性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けることは、法的性別が社会生活上の多様な場面において個人の基本的な属性の一つとして取り扱われており、性同一性障害を有する者の置かれた状況が既にみたとおりのものであることに鑑みると、個人の人格的存在と結び付いた重要な法的利益というべきである。このことは、性同一性障害者が治療として生殖腺除去手術を受けることを要するか否かにより異なるものではない。
そうすると、本件規定は、治療としては生殖腺除去手術を要しない性同一性障害者に対して、性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けるという重要な法的利益を実現するために、同手術を受けることを余儀なくさせるという点において、身体への侵襲を受けない自由を制約するものということができ、このような制約は、性同一性障害を有する者一般に対して生殖腺除去手術を受けることを直接的に強制するものではないことを考慮しても、身体への侵襲を受けない自由の重要性に照らし、必要かつ合理的なものということができない限り、許されないというべきである。
そして、本件規定が必要かつ合理的な制約を課すものとして憲法13条に適合するか否かについては、本件規定の目的のために制約が必要とされる程度と、制約される自由の内容及び性質、具体的な制約の態様及び程度等を較量して判断されるべきものと解するのが相当である。

(2)そこで、本件規定の目的についてみると、本件規定は、性別変更審判を受けた者について変更前の性別の生殖機能により子が生まれることがあれば、親子関係等に関わる問題が生じ、社会に混乱を生じさせかねないこと、長きにわたって生物学的な性別に基づき男女の区別がされてきた中で急激な形での変化を避ける必要があること等の配慮に基づくものと解される。
しかしながら、性同一性障害を有する者は社会全体からみれば少数である上、性別変更審判を求める者の中には、自己の生物学的な性別による身体的特徴に対する不快感等を解消するために治療として生殖腺除去手術を受ける者も相当数存在することに加え、生来の生殖機能により子をもうけること自体に抵抗感を有する者も少なくないと思われることからすると、本件規定がなかったとしても、生殖腺除去手術を受けずに性別変更審判を受けた者が子をもうけることにより親子関係等に関わる問題が生ずることは、極めてまれなことであると考えられる。また、上記の親子関係等に関わる問題のうち、法律上の親子関係の成否や戸籍への記載方法等の問題は、法令の解釈、立法措置等により解決を図ることが可能なものである。性別変更審判を受けた者が変更前の性別の生殖機能により子をもうけると、「女である父」や「男である母」が存在するという事態が生じ得るところ、そもそも平成20年改正により、成年の子がいる性同一性障害者が性別変更審判を受けた場合には、「女である父」や「男である母」の存在が肯認されることとなったが、現在までの間に、このことにより親子関係等に関わる混乱が社会に生じたとはうかがわれない。
これに加えて、特例法の施行から約19年が経過し、これまでに1万人を超える者が性別変更審判を受けるに至っている中で、性同一性障害を有する者に関する理解が広まりつつあり、その社会生活上の問題を解消するための環境整備に向けた取組等も社会の様々な領域において行われていることからすると、上記の事態が生じ得ることが社会全体にとって予期せぬ急激な変化に当たるとまではいい難い。
以上検討したところによれば、特例法の制定当時に考慮されていた本件規定による制約の必要性は、その前提となる諸事情の変化により低減しているというべきである。

(3)次に、特例法の制定以降の医学的知見の進展を踏まえつつ、本件規定による具体的な制約の態様及び程度等をみることとする。
特例法の制定趣旨は、性同一性障害に対する必要な治療を受けていたとしてもなお法的性別が生物学的な性別のままであることにより社会生活上の問題を抱えている者について、性別変更審判をすることにより治療の効果を高め、社会的な不利益を解消することにあると解されるところ、その制定当時、生殖腺除去手術を含む性別適合手術は段階的治療における最終段階の治療として位置付けられていたことからすれば、性別変更審判を求める者について生殖腺除去手術を受けたことを前提とする要件を課すことは、性同一性障害についての必要な治療を受けた者を対象とする点で医学的にも合理的関連性を有するものであったということができる。しかしながら、特例法の制定後、性同一性障害に対する医学的知見が進展し、性同一性障害を有する者の示す症状及びこれに対する治療の在り方の多様性に関する認識が一般化して段階的治療という考え方が採られなくなり、性同一性障害に対する治療として、どのような身体的治療を必要とするかは患者によって異なるものとされたことにより、必要な治療を受けたか否かは性別適合手術を受けたか否かによって決まるものではなくなり、上記要件を課すことは、医学的にみて合理的関連性を欠くに至っているといわざるを得ない。
そして、本件規定による身体への侵襲を受けない自由に対する制約は、上記のような医学的知見の進展に伴い、治療としては生殖腺除去手術を要しない性同一性障害者に対し、身体への侵襲を受けない自由を放棄して強度な身体的侵襲である生殖腺除去手術を受けることを甘受するか、又は性自認に従った法令上の性別の取扱いを受けるという重要な法的利益を放棄して性別変更審判を受けることを断念するかという過酷な二者択一を迫るものになったということができる。また、前記の本件規定の目的を達成するために、このような医学的にみて合理的関連性を欠く制約を課すことは、生殖能力の喪失を法令上の性別の取扱いを変更するための要件としない国が増加していることをも考慮すると、制約として過剰になっているというべきである。
そうすると、本件規定は、上記のような二者択一を迫るという態様により過剰な制約を課すものであるから、本件規定による制約の程度は重大なものというべきである。

(4)以上を踏まえると、本件規定による身体への侵襲を受けない自由の制約については、現時点において、その必要性が低減しており、その程度が重大なものとなっていることなどを総合的に較量すれば、必要かつ合理的なものということはできない。
よって、本件規定は憲法13条に違反するものというべきである
これと異なる結論を採る最高裁平成30年(ク)第269号同31年1月23日第二小法廷決定・裁判集民事261号1頁は変更することとする。
第3 結論
以上によれば、本件規定は憲法13条に違反し無効であるところ、これと異なる見解の下に本件申立てを却下した原審の判断は、同条の解釈を誤ったものである。
論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、その余の抗告理由について判断するまでもなく、原決定は破棄を免れない。そして、原審の判断していない5号規定に関する抗告人の主張について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。
よって、裁判官三浦守、同草野耕一、同宇賀克也の各反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。なお、裁判官岡正晶の補足意見がある。

引用:性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件

性別変更手術要件を違憲判決した裁判官

以下が判決文。判決を出した裁判官は、

裁判長:戸倉三郎
裁判官:山口厚、深山卓也、反対意見三浦守、反対意見草野耕一、反対意見宇賀克也、林道晴、岡村和美、長嶺安政、安浪亮介、渡惠理子、岡正晶、堺徹、今崎幸彦、尾島明

全員一致で決定。反対意見とは違憲判決に反対でなく更に踏み込んだ決定すべきというもの。

三浦守・草野耕一「差し戻しでなくそのまま原告勝訴の決定を出してしまうべき。」
宇賀克也「本規定の存在意義がそもそも存在しない…」←てか何が言いたいのか分からない。

簡潔に整理してみる

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責任重大ですが、噛み砕いて見やすくしてみました。万が一、間違えがある場合はご指摘いただけるとありがたく存じます。

特例法3条1項4号とは「抗がん剤投与など既に生殖機能が無い場合を除き、生殖腺除去手術が必要」とする規定。広島高裁は「憲法13条及び14条1項に違反しない」として棄却。

今回、最高裁にてその広島高裁の判決を破棄して差し戻したというもの。

判決の主文は、

【特例法制定時の状況(ガイドライン第2版)】…法令上で性自認のままの扱いを受け治療効果向上、社会的不利益解消のために制定
第1段階:精神科領域の治療、第2段階:ホルモン療法ないし乳房切除術、第3段階:性別適合手術とする“段階的治療”手順。また、第3段階実施済なら法的性別の変更が社会生活に必須と規定。

【現在の状況(ガイドライン第3版)】
医学的知見が進み、患者により効果的な治療法異なる→“段階的治療”が不採用に。

【世界の状況】
生殖能力喪失を要件とすることに対し、世界保健機関等が反対声明(2014年)、欧州人権裁判所が欧州人権条約に違反判決(2017年)。

【憲法に対する解釈】
憲法13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」

生殖腺除去手術の強制は、身体への侵襲を受けない自由に対する“重大な制約”に当たる。

ごちゃごちゃ書いてあるのは「強制してないけど性別変更審判を受ける場合は強制に等しい」。性別変更審判が必要な理由は「性自認に従った法令上の性別の取扱いは重要な法的利益」。

「“重大な制約”は必要かつ合理的なものでない限り許されない。」…その合理性に持ち出すのは“子をもうける”ことで、法施行から約19年間特に混乱は見られない。

医学的知見の進歩や社会の認識が変化したので「生殖腺除去手術か、法的利益放棄し性別変更審判を断念するか過酷な二者択一を迫る」過剰な制約状況に陥っている。

従って、現特例法の規定は憲法13条違反。

社会が不安を覚える最高裁判決でいいのか

確かに真っ当な判決

これは国に対し「自分を女、男として登録し直して下さい」と審査を受ける方の話。女風呂に侵入する痴漢の話でなく。

でも気になるのが、反対意見の裁判官三浦守の意見。※“反対意見”とはもっと踏み込んだ決定にすべきという“反対”なので注意。

なお、トイレや更衣室の利用についても、男性の外性器の外観を備えた者が、心の性別が女性であると主張して、女性用のトイレ等に入ってくるという指摘がある。しかし、トイレ等においては、通常、他人の外性器に係る部分の外観を認識する機会が少なく、その外観に基づく区分がされているものではないから、5号規定がトイレ等における混乱の回避を目的とするものとは解されない。

引用:性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件~16-17ページ

「確認してから男湯・女湯に入ることを許可する訳でなく5号規定の問題とは別の話、痴漢が出ることと本案件は別なので事業者が対処せよ」と見えてしまいます。

単なる痴漢がそんな性別変更審査受ける訳もない…と思ってしまうが、世の中には「絶対結婚しないし心は女性だし審査、更にはレズ。」とやらかすキワモンが居る異常社会。ユーチューバーとか。

確かに、性別変更未手術許容を痴漢増加・ハードルを下げる原因に決め付け、性同一性障害者の不利益に繋げるべきでないのは分かります。

例えば「健常者が嘘付いて障碍者用スペースを利用するからといって、それ無くして障碍者に不利益を被せる」のと同じことになりますから。

なので、これは真っ当な判決に見えます。理屈上は。

期待する“最高裁判所の判決”

でも社会に与える影響を小さく見過ぎてないですか。こんな重要案件の場合、マスコミに最高裁命令でも発令して誤解の無い情報を1ヵ月24時間放送し続けろとかできないもんかね。

こんな読みづらい判決文1つで片付けようとすんなよ。

望まれる最高裁の判決とは大岡越前の裁定。でもそんな天才存在しないから国家の叡智を結集し法治国家としてる訳で。司法の頂点最高裁判所には大岡裁きを実現して欲しいと望みます。

最高裁の判決”とは単なる理屈屋による屁理屈でなく社会に安心感を与えるもの。例えばブルドッグソースの株式を買い占めに来たユダヤ人を“濫用的買収者”として断罪するとか。

法の元の平等目指して不平等誕生

結局、櫻井よしこ氏は「性同一性障害特例法を守る会」の美山みどり代表らの意見を無視したことを問題にしてたみたい。誰でも女風呂入れるようになるからってんではなく。

既に性転換手術済の方々との不平等は解消されない判決でした。

有性生殖の生命体の根幹に関わるこんな事例の場合は、少なくとも“爺の若い頃は違ってなぁ”との別世代認識できる50年位継続しないと変えるのは拙速では?

元の規制に非合理性が無く、つい最近の研究結果を即反映する方が数年違いで既に手術を受けてしまった方との“法の下の平等”が成り立ちません。

医学が更に進歩し全く危険なく生殖腺除去手術ができるようになった暁にはこの判決を即覆すつもりか?

海外の判決なんぞ関係なくここは日本。非難されたなら、そんな後進国家から国連の分担金は要りませんよねと政府が拠出金を全部カットしろ。アイツらそれで掌返すんだから。

海外の目をやたらと気にする日本人が多いが、海外が正しい言うならまず土足で自分のベッドに入れ。大腸菌O157も飲み込め。

最後に本投稿の趣旨=選挙時の国民審査向けの情報を整理。

結局本件は、反対意見も含め最高裁の裁判官全員が違憲判決を下しました。

裁判長:戸倉三郎
裁判官:山口厚、深山卓也、反対意見三浦守、反対意見草野耕一、反対意見宇賀克也、林道晴、岡村和美、長嶺安政、安浪亮介、渡惠理子、岡正晶、堺徹、今崎幸彦、尾島明

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