ポク太郎です。
映画に関しては基本、何でもかんでも賞賛する元ヤクルト関根監督のような爺です。
偉そうに映画を評価する立場の人間でもないので我慢してきましたが、人生を通し追いかけた『ランボー』シリーズ最終作の惨状を見て我慢できなくなりました。
「最近の○○は…」は言わない主義ですが、昨今の映画の惨状っぷりに対する高齢者の不満を文章で表します。
話題は『ランボー・ラスト・ブラッド』。が、同様に『ターミネーター・ニューフェイト』他の体たらく映画の酷評にも当たります。
『ランボー』『ロッキー』『ターミネーター』『エイリアン』、その周辺世代の方向け。
上記映画シリーズ全体の
含みます。
『ランボー・ラスト・ブラッド』酷評のための歴代あらすじ
政府の命令により出兵したにもかかわらず、帰国後、アメリカ社会全体から“化学兵器で赤子を惨殺した戦犯”扱いされたベトナム帰還兵。
『1ST BLOOD』映画データとあらすじ
公開年 | 1982年 |
上映時間 | 97分 |
興行収入 | $47百万 |
職は無く仲間を求め戦友を捜し歩くも全員死亡。そんな帰還兵がとある町の保安官に差別され抵抗し“浮浪罪”で逮捕。疑わしい人間を逮捕するための保安官側の免罪符でした。
無教養警官の虐待により、ベトナム時代捕虜収容所でのトラウマが蘇り事態は悪循環。ランボーが警察署から逃亡し山中へ。
執拗に追い詰める保安官側に対しランボーが逆襲。町全体を破壊する報復ゲリラ戦。
保安官を追い詰めた場に現れた信頼する元上官トラウトマン大佐にやっとランボーが重い口を開きます。

ランボー、空軍の戦友ダンを語る
『ランボー/怒りの脱出』映画データとあらすじ
若かりしジェームズ・キャメロン作の大ヒット。
公開年 | 1985年 |
上映時間 | 94分 |
興行収入 | $150百万 |
前作の破壊活動により強制労働付の刑務所に収容されたランボー。トラウトマン大佐の救助策は現在尚ベトナムに拘留される捕虜の情報収集作戦。成功すれば特釈。
後で参照するので二作目『ランボー/怒りの脱出』のあらすじは表形式で。
1 | タイの作戦本部到着。司令官マードックと面会。 |
2 | 出撃するも飛行機から宙吊り→遅れて現地諜報員コーと合流。 |
3 | 密輸業者の船を使い収容所に潜入→捕虜1人救出。 |
4 | 逃走中、密輸業者が裏切り戦闘→ロケットランチャーで脱出。別れ際の諜報員コー「You are NOT Expend-Ball.アナタ捨て駒じゃない。」 |
5 | 山頂で救助のヘリと合流するも司令官マードックが突如作戦中止命令→ランボーと捕虜置き去り。 |
6 | 捕まったランボーをソ連軍ポドフスキー中佐とユーシン軍曹が尋問。 |
7 | 拷問中に売春婦に化けたコーが救出→共に逃亡。 |
8 | 逃げ切った後の場面にて、ベトナム収容所責任者がコー射殺。 |
9 | ランボーのゲリラ戦描写いわゆるランボー・タイム。 仕留めるゲリラ戦法。 |
10 | サトウキビ畑に戦場を移し、画面に登場するのは爆薬付き矢じりEXPLOSIVE。 |
11 | 滝を背景にコーの仇=収容所責任者を、戦車をも破壊できるEXPLOSIVEでコッパ微塵。 |
12 | 間髪入れずヘリで来襲してきたユージン軍曹との戦闘→ヘリを乗っ取り収容所へ。捕虜救出に向かいます。 |
13 | ここでランボーの人物描写。 とソ連兵に爆撃ミサイル連打。 |
14 | 重装備ヘリのポドフスキー中佐との決戦。決着は死んだふりランボーのロケットランチャー。 |
15 | タイの作戦本部に帰還。“時代は変わった”象徴の指令室にマシンガン乱射→司令官マードックに追求&命令。 |
16 | トラウトマン大佐への演説「ベトナム兵全員の一つの願い。俺も同じだ。」とフィナーレ。 |
救助された捕虜がランボーへ敬礼する最後の一瞬のシーン。着目すべきは一瞬の描写で最大の納得感“戦友同士に生まれる強固な絆”。
派遣された全兵士が命を捧げ目指した勝利。が、命令した側である政府にハシゴを外された兵士の心の叫びでフィナーレ。
『ランボー3/怒りのアフガン』映画データとあらすじ
公開年 | 1988年 |
上映時間 | 101分 |
興行収入 | $53百万 |
タイの寺院で生活するランボーにアメリカ国務省からアフガン情報収集の依頼。断った結果、恩人トラウトマン大佐がソ連軍に捕獲されてしまいます。
ここでランボー単独の救出作戦。
現地のゲリラ部隊ムーサ・ガニと接触、3000年続いた競技でゲリラ指導者マスードらとの信頼関係構築。また、ソ連基地潜入時にランボーを慕う現地の少年が付いてきてしまいました。
そのせいで救助作戦失敗、一旦退却。深手を負うランボーですが基地へ単身舞い戻りトラウトマン大佐救出→逃亡。
追うソ連軍ヘリに対しEXPLOSIVE。洞窟戦へ展開し、ムーサ・ガニも困惑させた照明用ブルーライトでスペツナズ・コマンドーを撃退。ボスも手榴弾で退治しました。
逃げ切れたかに見えた国境付近。ソ連軍司令官ザイゼン大佐が大軍を展開し待ち構えていました。
絶体絶命を救ったのは競技で分かり合ったアフガンゲリラ。火炎瓶や原始的な爆撃機で応戦。ランボーはソ連軍の戦車を乗っ取り、低空飛行するザイゼン大佐のヘリに体当たりしました。
トラウトマン大佐らは戦友となったアフガン戦士らにムシャラーと見送られアフガンを後にしました。
『ランボー/最後の戦場』映画データとあらすじ
公開年 | 2008年 |
上映時間 | 91分 |
興行収入 | $50百万 |
蛇猟で生活するランボーの元にNGOが出航依頼。内戦地ミャンマー内で弾圧されるキリスト教信者カレン族支援が目的。
NGOメンバーサラの理想と戦闘員の現実。内面を見抜くサラとの会話でランボーが説得されてしまいました。
途中返り討ちにした海賊の命の件でランボーとNGOマイケルが対立するも一応送迎成功。が、辿り着いたカレン族の村をミャンマー軍が急襲。NGO全員が囚われてしまいました。
大使館の依頼を受け傭兵を乗せミャンマーへ→現場到着。撤退しようとする傭兵をボートマンランボーが説得→救出へ。
ミャンマー軍駐屯地に侵入し脱出。サラ救出のため遅れたランボーはその昔イギリス軍が落とした不発弾にクレイモアを仕掛け一網打尽にしました。
先に逃げた傭兵は海岸縁で捕捉→全員処刑の危機。それを救ったのが後方でガトリングガンを奪ったランボー。カレン族の兵士も駆け付け総力戦が展開されました。
戦闘の中、殺人を非難してたNGOマイケルもやっと現実を認め戦闘。ランボーは逃げるミャンマー軍司令官にトドメを刺しました。
戦闘後、負傷者の手当を行うNGOマイケルは遠くに見えるランボーに手を振ります。サラとの触れ合いで何かに気付かされたランボーはアリゾナの実家に戻りました。
『ランボー ラスト・ブラッド』映画データとあらすじ
公開年 | 2019年 |
上映時間 | 101分 |
興行収入 | $44百万 |
アリゾナの実家で生活するランボー。旧友とその孫娘ガブリエラと共に暮らしていました。
ガブリエラの父親は家族を捨てたクズ。が、それでも父親の居場所を調べメキシコへ。その場でメキシコ人身売買業者に捕まってしまいます。
救出に向かったランボーが捜索中に捕まりリンチ。ガブリエラの写真から捜索対象がばれ、それを理由にガブリエラが虐待→薬漬けに。
現地のジャーナリストに救われたランボーが再度侵入→救出。が、アリゾナへの帰還途中、ガブリエラが息絶えてしまいました。
ランボーは農場地下に罠を構築、戦闘準備を整え、再度人身売買業者のビルに潜入→宣戦布告。人身売買業者をアリゾナの農場に誘き出します。
人身売買業者が侵入した農場はトラップだらけ。全滅させたランボーは人身売買業者ボスの心臓を抉り出しました。
不満は“印象の残し方”から見える“手間暇掛けてない”
罠に掛かった敵写して“ランボーの罠”と周知
映画内の描写時間の使い方の話。比較のために過去のトラップ描写を思い出します。
一作目ではランボーが罠を仕掛ける場面を画面に写していません。二作目の 仕留めるランボー・タイムも同様。
それでもこれらの罠はランボーが仕掛けたグリーンベレートラップと聴衆全員に伝わっています。
これがランボー・タイムと固有名詞が付けられ、コメディ映画で散々真似され、ゲリラ戦の代名詞となる位世に対して強印象を与えた描写。
仕掛ける様子、移り変わりなどは省略し、引っ掛かった敵の姿だけで聴衆に伝達→無駄な時間は節約し、物語の“転”部分である筋道説明に時間。
上の二作目あらすじ表を見ると、潜入→業者裏切り→突破→司令官裏切り→意外な救助→犠牲→反撃→急襲→脱出→決戦→フィナーレと目まぐるしく物語が展開。同じ1時間半とは思えない濃密さ。
実際に映画内で使われたトラップ描写は一瞬。でもこれが過去作が成し遂げた“強烈な印象”。
発案~最終形態まで手間暇・時間を掛けた結果であろうと推測します。“ブラッシュアップ作業”てヤツ。
別映画まで展開する重厚な人物像表現と強烈な一瞬描写
ランボーファンなら分かるはず。
ベトナム諜報員コー:You want to eat? Maybe later…
密輸船上での会話。作戦に選ばれた理由を聞かれ、ランボー「自分はパーティを欠席しても誰も気付かないExpend-Ball捨て駒。」
時間的には短いシーンですが、諜報員コー、ランボーの人物像と過去の経緯が凝縮された会話。後の別映画『エクスペンダブルズ』。タイトル名を聞いてすぐ上記会話を思い出したのでは。
また、コーを射殺したベトナム収容所責任者のコッパ微塵。誰もが覚えてると思います。覚えてる理由は諜報員コーへの思いだから。単なる過激描写ではありません。
意味を持った強印象を残す描写が過去作には点在しました。大切なのは描写時間の長さでなく一瞬であろうとも意味が凝縮された描写。
三作目のEXPLOSIVEが写った1秒間でどれだけ聴衆の感情を高ぶらせたかを考えれば納得できるかと。反撃ののろしとして聴衆に伝わってる証拠です。
弓矢を組み立てるシーンを突然アップで写し、聴衆に何かな?と思わせた直後、一瞬写すEXPLOSIVE。よく思い出してみて下さい。
当然これらは企画段階で思い付くものではなし。物語構成・画面構成・シナリオ・時間調整を繰り返す過程を経て、最終的に最適化されその一点に凝縮されるもの。
惚れ込んだ自分のアイデア捨てる=手間暇かけた良作
『ランボー ラスト・ブラッド』では物語作成に関し根本的に無理が。
行方不明となった“ガブリエラの捜索”を要する物語構成←これがランボーの人物像に矛盾。
“捜索”に必要なのはinterrogation尋問。最後まで口をつぐみ、最後の最後で感情を爆発させるランボーに最も合わない行動を要する物語構成となってしまっています。
“救えなかったトラウマ”表現のためと思われる冒頭のボランティア救助活動。直後の会話場面で既に、何の映画を観てたのか忘れるレベル。短髪ランボーが喋りまくります。
また、アリゾナ農場でのトラップ描写が惚れ込んだアイデアなのかもですが、陣地内に誘き寄せるため、ランボーの敵地潜入が3回も必要な物語構成となることに←描写時間の浪費。
映画とはハッキリと箇条書きで伝えるのでなく映像を通し聴衆に感じ取らせるもの。なのに映画上映中の1時間半すべてが“単なる説明描写”に成り下がっています。
そうなってしまう理由として考えられるのは以下。
例えばブログを書く際、お気に入りのフレーズを残そうとするがために文章全体に説得力が無くなってる場面によく遭遇します。
それを回避するのはバッサリ削除して相当分を別で生み出す手間暇。こんなクソブログの駄文とスタローン映画を同列に語るなと言われそうですが、何事も同じ。それしかありません。
最初の計画・製作スピードを重視するあまり、完成度を高める行為が抜け落ちた典型的な例。どうにもならない場合はバッサリ行く覚悟が必要ですが、それを怠った結果に見えます。
例えば、ガブリエラ捜索中にクラブで監視してたジャーナリストカルメン。カルメンをスパイとして敵陣地内でトラップを実現すれば物語も奇想天外な展開を埋め込める位にスッキリできます。
もちろんそのトラップを考案するのは大変な労力要しますが、それこそが良作に必要な手間暇。最初の構想はあくまで構想。最適解ではありません。
同じ現象を『ターミネーター・ニューフェイト』でも見た
別映画『ターミネーター・ニューフェイト』。“T2の正統な続編”と豪語し鳴り物入りで公開しました。が、結果は散々。
これは『ターミネーター2』より後の3、4、5を無かったことにするリブート作品。T2で回避された審判の日ですが、別の未来が派生し同様に人間対マシンの戦争が繰り広げられてるとのこと。
それでターミネーターに狙われたのがメキシコ人女性ダニー。それを守る強化型人間グレース、合流するサラ・コナー。
終盤で明かされた驚愕の新事実、本映画最大のShe is John!?」。「狙われたダニーは聖母サラ・コナー相当でなく指導者ジョン・コナー相当だった!」
は「意外性も何もない、特に取り立てて書く程にもない小さな謎。
とある思い付きがどんなに素晴らしく感じてもそれはあくまで思い付き。実際に形にしこねくり回して作り上げる過程を端折った結果に見えます。
「大した意外性ないじゃん」な欠陥を抱えてるにも関わらず“T2の正統な続編”と豪語し大爆死という致命傷を負った作品。
少なくとも爺の中ではジェームズ・キャメロンへの信用に対し致命傷となりました。『エイリアン2』も『タイタニック』も無かったことにするレベル。
これは『ランボー ラスト・ブラッド』の体たらくと根っこを同じくするものと思います。
上記ランボーシリーズの興行収入を見ると、二作目が大ヒットなだけで、散々な『ランボー ラスト・ブラッド』でも1、3、4とほぼ同額の$50百万。
つまり『ランボー』を冠すればそれだけで商売的にはOK。
“効率化”・“スピード”。もちろん利益追求が目的なので“先立つモノ”を最優先するのは当然。
が、もう一つ大事な要素が“信用”。その“信用”を食い潰すことで稼ぐ手法が蔓延すると、いいモノが生み出されない世の中へ。
“信用”を失うこと=その場シノギ。経団連の大好きなヤツ。
その場しのぎ的な商売に大切なのは“効率化”・“スピード”。長い目で見る商売に大切なのは“信用”。それに必要なのは人件費の掛かる“ブラッシュアップ”←経団連の大嫌いなヤツ。
映画だけでなく家電製品他すべてに関しても、その場シノギがダメであると歴史中で認識されてるのにそちらへ進むのが現在の供給側。
人生を通し追い続けたランボー。最終作『ランボー ラスト・ブラッド』で人生終了。まさに“この世の終わり”を感じさせる象徴映画となってしまいました。
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