ポク太郎です。
悲劇、惨劇がショッキングな大ヒット海外ドラマ『ゲームオブスローンズ』。古代を想定した歴史ファンタジー。
当然作り話ですが、各描写を構想する製作陣の意図を考えて視聴すると深く深く入り込んでしまいます。ここではその描写に対する初老の解釈を書き連ねます。
このドラマで描かれる胸糞悲劇といえば“差別・偏見”。となると着目するのは当然ティリオン。
シーズン4までの
を含みます。
ゲームオブスローンズは古代の物語
ルネッサンス前の世界、恐らく理屈が全く通らない社会。現代人にはとてもじゃないけど理解できない世界と考えます。
モノが上から下へ落ちる、3:4:5の長さで三角形を作れば直角三角形になるなど、簡単に証明できるようなことは当然理解してました。
エジプト文明では既に年金まで存在し、民は現在と同じように毎日ビールらしき趣向品を嗜みながら生きてたなどの話はよく聞きます。
が、サラッとやってみせられない、証明できないものに関してはこじつけが当たり前。
“神”に仕える宗教者が発する理屈、理由付けに大義名分が与えられてたものと思います。
天変地異が起きたのは神の教えに従わない誰々のせい、「約束の王」の血を受け継ぐ者を生贄にすれば戦に勝てるはず。
“人知を超えた何か”に無関係や複雑怪奇な因果をこじつけ、大量の犠牲者を生み出してきたものと想像します。
ゲームオブスローンズ中の迷信
世界一の富豪一門ラニスター家を襲った悲劇。母ジョアンナはよじれた悪魔に取り付かれ、その悪魔が産まれ来る際に殺されました。
産まれ出たよじれた悪魔の猿はティリオン・ラニスター。

どうにもならぬ悲劇に対しやり場のない怒りを何処かへぶつける。そこに持ち出すは世でささやかれるこじつけ。
こじつけと共に肉親も含めた世の中は小鬼インプとして扱います。
現代人が見るドラマなので“小鬼”を単なるあだ名として捉えてるかと。
ドラゴンが飛び回るファンタジーなので、試しに「人間に寄生し命を奪う亜種と断定されてた」と考えてみて下さい。そのようなフシが思い当たるのでは。
父タイウィンの発言は「絶対にキャスタリーロックは継がせない。」
理由は「母ジョアンナを殺したから」「娼館巡り&飲んだくれの邪悪な出来損無いで、肉欲と下劣な滑稽さの塊だから」。
ラニスター家として扱うのは“息子でない”ことを証明できない&謙虚さを得るため自分に与えられた罰だから。
が、神に逆らってでも「キャスタリーロックを娼館にはさせず。」
上記はスタニスから王都を守ったティリオンがキャスタリーロック後継を要求したシーズン3のシーン。
会話スタート時に生活改めず寝室に娼婦連れ込んだと嫌味言われてるので、そのせいと受け取ってしまいます。
が、「意地でもキャスタリーロック継がさず」の理由は「母親殺したから」。つまり「ティリオン=よじれた悪魔の猿」が理由。
生活改めない現在の件も非難してるので勘違いしますが、「悪魔だから母親殺し、悪魔だから生活改めず」=出生時点のティリオンを“矯正不可な悪”として非難。
直前に労い求められ、タイ「拍手喝采求めるのは芸人、お前はラニスター。」=上で言ってる通りの行動。
つまり、上の“悪魔だから云々”はタイウィンの中での論理的な追求結果。
現代で考えれば、言いつけ聞かないティリオンが悪いんですが、その聞かない理由と母親を殺した理由を同じものと断定しています。
タイウィンが“ティリオン=非人間な悪魔”と信じ込んでたのでは?と伺えるシーン。この場面はシーズン3エピソード1の28分辺り。
この時ティリオンが「ジェイミーは王の盾になり相続権放棄した」と無神経発言。王の盾となったのは、狂王が跡継ぎ奪い凹まそうと嫌がらせで任命したから。これは家だけを重んじるタイウィンが最も激怒することであり、結果、王の手辞任。ドラマ開始前の出来事。
悲しいのは、ティリオン自身も鎧としてまとってるだけでなく「自分=悪魔」と認識してそうな所。
もちろん出生時の事件は故意ではないが、不可抗力と確信するための社会的常識存在せず。
義務教育+高等教育を受け、膨大なテレビ番組で仮想体験豊富な21世紀の視聴者は一人残らず“不可抗力”と判定するでしょうが、番組内は全部古代人なので。
分かってるのは兄ジェイミーだけ、ブロンは気にしてないだけ、ポドリックは言わないだけ。
父タイウィンとティリオンの関係を表す描写
1. 対ロブ戦での野営地でティリオンに王の手代理任命。 | |
長男ジェイミーが捕われ緊急会議。王都を任す娘サーセイが使えず苦慮→状況を理解してるティリオンを王の手代理に。
理由を聞かれ、タイ「息子だからだ。」←ティリオンはビックリしております。 そこへ辿り着くまでの描写は以下。 父タイウィンにとって邪魔者と、常々伝えてきたことが伺えます。 |
王都のシナリオはごちゃごちゃしてるので整理すると、
→この後、ティリオンが王都防衛。
→使い捨て。
→上で書いたキャスタリーロック要求のくだり。
→タイレルの策謀潰しから発生したティリオン-サンサの結婚。
→棚ボタ北部総督後継要求の際、再度「波にさらわせたかったが息子として育てた。」とダメ押し。
→ジョフリー暗殺からティリオン死刑判決。
その後、脱獄したティリオンが向かったのはタイウィンの部屋。
2. タイウィンに何かを確認しに行った脱獄後のティリオン。 | |
予想外にシェイ→絞殺→ジョフリーのボウガンを携えて便所へ。
確認事項は「ずっと死んで欲しかったのか?」 再質問。 ここでタイウィン、シェイを娼婦と呼ぶなとの警告を無視→ティリオン、矢を発射。 タイウィンの捨て台詞「お前など息子でない。」に対し、「アンタの息子だ。」
「常に息子だった。 I have always been your son.(現在完了形)」
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ティリオンはタイウィンの息子
どういう思いでの発言なんでしょうか。
タイウィンの発する「私の息子だ。」は「都合のいいときだけ」という感じはありません。理屈は通ってるので。
また、シェイを絞殺しボウガンまで携えてるので、ティリオンは既に覚悟を決めてたと思います。
2番タイウィン射殺のシーンは恐らく全シーズンを通して最もシリアスなもの。だから皮肉的な捉え方は除外。
「ずっと死んで欲しかったのか?」の答えは恐らくティリオンも承知済。
これまでのタイウィンの言動、このシーンの「そうだ」発言の表情を見れば、ずっと本当のことを言ってたと分かります。
でも更に質問を重ねました。「息子へ死刑宣告はなぜ?」もうタイウィンは答えず戻ろうとし、シェイを再度娼婦呼ばわり→矢発射。
切れたタイウィンの「息子でない」発言に、
「アンタの息子だ。常に息子だった。」
引用:HBO『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン4 エピソード10
ティリオンが飲んだくれて娼館巡りをしてるのは事実。
が、家の一員としての責務を果たすため、“剣には砥石、精神には書物”と夜も寝ずに書物を読んできました。
よじれた悪魔なのに父タイウィンに「息子だからだ」と王の手代理に任命され、王都を死守。
諦めてたはずの“非よじれた悪魔を父親に認められるかも”と一縷の望みに賭けてきました。
ティリオンがグンッグンッと虫を潰す従兄弟オーソンをずっと観察し続けたのは「理由なく殺されるのは酷いことだから」。
力を持つ側の気分次第でないことを期待し理由を探し続けてきました。
が、最後まで娼婦を認めない父がよじれた悪魔でないと改める訳なし。七王国一の実力者で一番の味方になる筈の父親に息子殺害する理由を追求しても“嫌い”以外出てこず。
やはり殺害前最後の一言は、
○非悪魔である主張とそれが受け入れられぬ絶望。
○“殺される理由は気分次第”を確信した諦め。
○世を捨てる覚悟。
この辺りを表現した心の叫びと受け取るのが正解でしょうか。
辛いドラマです。
王の手代理任命時の忠告「シェイ連れて行くな」を破り、その後王都防衛→キャスタリーロック要求のくだり。
タイウィンの台詞がそれ重視してるように見えるので、ティリオンの忠告無視が原因であんなこと言われてると勘違い。
でもセリフを順番に追いかけると分かりますが、とんでもないことを言い放っております。
息子を排除したくて堪らないほどの邪魔者扱い。これが『ゲームオブスローンズ』制作陣の想定した古代。
今、ドラゴンが飛び回るファンタジーだから試しにと話を始めましたが、じゃあドラゴンが飛び回らないルネッサンス前の世界だったら…。
どうなんでしょう。全く同じ状況と推察してしまいますが。
実際のリアルな人類史、ホントのところはどうだったんでしょう。被差別側の嘆きはどれほどあったのでしょうか。色々考えさせられます。
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