ポク太郎です。
あれ？と思う質問を受けました。
そういえば最近は高校受験を控える高齢者の子も本ブログを見てる模様。
もしかして絶対権力者＝王様と勘違いした中学生も居るのかも。なので歴史のお勉強にもなる形でその説明を書いてみます。
シーズン2までのを含みます。
タイウィンが王になる訳ない理由
とは、時の王ジョフリー王の王の手に任命され、歯向かえる者がこの世に存在しない絶対権力者として『ゲーム・オブ・スローンズ』内で君臨しました。
その一番偉いタイウィンが何故玉座に就かなかったのか、王様にならなかったのか疑問に思うかも。
普通に考えれば、答えは「既にラニスター天下の世だったので、タイウィンが王様になる必要無しだし、なってしまったら失策。」
権力者、権力者家系にとって、その立場が最も危険にさらされるタイミングは王位継承時。
徳川家康の例で考えてみると、徳川家康はさっさと征夷大将軍の座を跡継ぎ秀忠に譲り、2代目将軍秀忠に盤石な体制を築かせました。
権力者の気にすることは自分の目の黒い内に次世代、次々世代の盤石な体制を築き上げること。つまり、2代将軍秀忠の盤石な体制、3代将軍家光の盤石な体制。
「何びとも必ず老いて必ず死ぬ」が不偏の真理だからです。
自分の孫
が既に王位に就いてるタイウィンにしてみれば、自分が王位に就くことは時計の針をわざわざ過去に戻し、現世代まで成功した天下取りを自らリセットしてしまうようなもの。
既に歯向かえる者は存在せず、自分の好きにできる世の中が出来上がっています。
特にタイウィンとは個人の名誉を気にする息子ジェイミーの態度を意味のない“虚栄心”と叱責する方。つまり、大切なのは個人名でなくラニスター“家”。
タイウィンも徳川家康もしっかり理解してるのは以下。
肩書は無くとも“実質的な王”とは→“歯向かえる者存在せず、世の中を好きに動かせる人物”。
息子
見捨てつつ王位を目指すベイロン・グレイジョイ
なら自ら王になってたかも知れませんが、タイウィンはそんなバカには見えません。
現王様を覆すには膨大なエネルギーと大義名分
出来事を箇条書きで並べた歴史の教科書では触れられない徳川家康が天下を取るまでの経緯です。
最高重鎮徳川家康はひたすら豊臣秀吉が死ぬのを待ち続け、前田利家死亡タイミングで前田家跡継ぎ利長に謀反の疑いを掛け黙らせます。
次に執拗な上杉景勝ツツキ。切れるまで因縁を付け続けました。遂に切れた上杉景勝に対し「豊臣家に対する謀反」と言い張り新潟まで上杉討伐。
あからさまな徳川家康の行政に豊臣秀吉恩顧の奉行石田三成が檄を飛ばし、反徳川家康軍を招集。西軍として対峙したのが関ケ原。徳川家康の上杉討伐の帰り道です。
上杉討伐に随行したのは福島正則、黒田長政、藤堂高虎←いずれも豊臣家子飼いの武将。豊臣家最高重鎮には随行する以外できないし、またこれら武将は奉行石田三成が大嫌い（※）。
徳川家康にそこ付け込まれたて見方も。“頭が良い”と石田三成を重く用い過ぎたのが天才百姓豊臣秀吉一番の失策だったのかも。
なので豊臣家方である西軍と対峙した東軍の主力は豊臣家子飼いの武将てこと。当の徳川家康は豊臣軍の最高重鎮内府だし。
のような“秀忠遅参公”。つまり、関ケ原の合戦とは豊臣軍vs豊臣軍。
徳川家康の天下狙いがあからさまなので、この関ケ原を制してからは止められる力が存在しませんでした。大阪城に居た毛利輝元も戦わず撤退する有様。
時は群雄割拠した戦国時代の直後＝支配者交代も珍しくない時代。豊臣秀吉だって織田家から天下を奪い取った身。関白になるために藤原家を名乗った単なる百姓です。
なので、徳川家康の場合は征夷大将軍に即位でき、天下を取りました。
でももしその当時、豊臣秀吉でなく天皇家が直轄してたとして、その天下を徳川家康が奪ってたらどうなってたでしょう？
ポク太郎が断言できる立場ではありませんが「まず無理じゃね？」天皇家を覆して自分が王様と主張すれば、日本中誰もが朝敵とみなします。邪馬台国の卑弥呼の末裔でも難しい位。
公家ですらない三河の田舎モンの娘を皇后に押し付けたり、孫家光の妻を天皇家から差し出させたりはしたにせよ、あくまで上げ奉るのは天皇家。
これまで治めてきた王様に取って代わるには、それを覆せるだけの大義名分を要します。徳川家康の場合は一代限りの百姓相手なのでその意味では難易度が低かったとも言えます。
ゲーム・オブ・スローンズでは狂王という暴君が居て、ロバート王
が300年王朝を覆せるだけのエネルギー・大義名分が存在しました。
つまりは豊臣秀吉と同じ一代限りですがバラシオン家とはタイウィンが取って代わる大義名分の薄い存在。暴君処罰戦争を主導した王様なので。トドメ刺したのは自分らではありますが。
だから、世間が受け入れるだけ現王様を否定できる場合以外は、王座奪取が難しいてことに。
主旨は「重要なのは“征夷大将軍に即位した”でなく“即位できる力があった”」。なので次に、王位交代が難しい時代の権力者を知るため鎌倉時代まで遡ります。
“権力者”理解のため鎌倉幕府を考えてみよう
最近の中学校へ通う高齢者は鎌倉幕府創設を1185年と習うようです。後期高齢者は「1192イイクニ作ろう鎌倉幕府」と1192年で憶えました。今はどうでもいい創設年の話。
鎌倉幕府は源氏？平家？
源氏とは清和天皇、平家とは桓武天皇を祖とする武家と呼ばれる軍事貴族。大元は同じ天皇家ですが多世代跨いで兄弟叔父甥が大量に存在すれば対立するのもごく普通。
鎌倉幕府はご存じ源頼朝が創設しましたが、ややこしいのはその鎌倉幕府を倒した次の室町幕府の創設者足利尊氏。足利家は源氏方の名門です。
→正解は“YesまたはNo”。
ここで上記タイウィン公に絡む話。
鎌倉幕府は確かに源頼朝が征夷大将軍となり創設しましたが、結局妻政子の実家で、平家を祖とする北条家が実権を握りました。その権力者は政子の父北条時政。
執権なる位を創設し征夷大将軍をお飾り状態に。時政の直系を北条得宗家（とくそうけ）と呼び、執権政治により絶大なる権力を握りました。
なので、モンゴル元のフビライ・ハーン来襲に対応したのもその子孫。元寇のタイミングに合わせ、文句なしの北条得宗家跡継ぎ北条時宗（※）を執権に据え対処しました。
つまり、源氏創設であるはずの鎌倉幕府の実態は平家によるものでした。対抗し最終的に倒したのが源氏方である足利尊氏。なので、先ほどの正解を“YesまたはNo”と書きました。
「実質、平家方が牛耳っていた鎌倉幕府を源氏方の名門足利尊氏が倒した。」
史上最強の大帝国に狙われた未曽有の国難時なので、争いに繋がるすべての不安要素を排除し国内一丸とするためかなと個人的に予想。
配下が命令を聞かなければ天皇すらも名目上
すべてを決定する権力者が征夷大将軍、執権いずれであれ、日本の場合、どの時代も国家の頂点に置かれる名目上の命令者は天子様と呼ばれる天皇。ここが世界最長の国日本が他と異なる点。
頼朝以外の鎌倉時代の征夷大将軍に一切権限は無いし、歴史中には晩酌すら得られない天皇も居たとか。モンゴル元からの自分宛の親書に、執権の断りなく返答した天皇を罰するまでありました。
明らかに上記時代の征夷大将軍≠征夷大将軍徳川家康、上記～江戸時代の天皇≠天智天皇。
『ゲーム・オブ・スローンズ』の世界ではまだ“王であること”を理由に配下が命令を聞きますが、ここで挙げたように配下が命令を聞かなければ征夷大将軍どころか天皇すらも単なるお飾りに。
実際、ドラゴン無しでは攻略されないアリン家は王都の命令など鼻にもかけない状態でした。
必要なのは命令を聞かせられる力。
肩書得られるのは大義名分ある場合
もちろん肩書で力が増大するのは確か。なので歴史上の人物はその肩書を目指しました。豊臣秀吉の関白就任なんてまさにそれ。
“執権”とは自分らが勝手に名乗った肩書、征夷大将軍とは天皇の勅命による肩書。どこぞの一企業が名乗る“CEO”なんぞより、国家が定める役職“内閣総理大臣”の方が重いのは明らか。
それでも、天皇を退ければ朝敵と見なされる、大義の無い戦争を以って征夷大将軍の座を奪うしかない世界において、何の威厳も無い“執権”なる肩書でその力を奪ったのが北条家。
つまり、悪者が支配する世の中でなければ、それを追い落とすという「自分が取って代わるための大義名分」が無いため、肩書が得られないのが普通→なら目指すは“実質的な”王様。
タイウィン公の状況を考えると、北条家と同じようにラニスター家が王座を奪う大義名分がありません。
長くなり論点がボヤけてしまいましたが、
●肩書も重要だけど、時代によっては得ることが無理な場合も。
⇒必要なのは“力”なので、肩書が無いなら無いなりの方法で天下を牛耳る←これが実質的な王様。
権力者の“思惑”は記録に残らず→辻褄合うよう判断
“行動理由”につながる情報＝人柄、時代背景、その時の状況他を重要な判断材料として、歴史家は行動の記録からその意図＝“思惑”を探ります。そうするしか方法が無いので。
画面に映らない“タイウィンの思惑”＝「王に成る気無し？」はまさにそれと同じ。だから人柄・行動から自分で判断するしかありません。
タイウィンの人柄・行動・状況と上で挙げた日本での例を抜粋すると、
- 真の王とは「王様と呼ばれる」でなく「歯向かえるもの存在せず世を好きに動かせる」人物。
- あと50年は自分の孫が王様。モノゴト決める自分が王なら10年待たずに危険な王位継承。
- “個人名ジェイミーの名誉”にこだわる長男の態度を“虚栄心”と叱責。
- 王座奪取に要するのは大義名分。徳川家康が天下を奪った相手は百姓。同じ一代限りでもバラシオン家は暴君退治戦争を率いた家系。
- タイウィン・バラシオンには成れませんが、孫なら戦なしで自動的に時の王＝バラシオン王に成れ、執権政治で天下を牛耳ることも可能。
上記を鑑みて“自ら王に成る”のと“肩書は孫に譲り自分が世を牛耳る”のはドッチが得でしょうか。また、タイウィンの性格・主義・主張を鑑みてドッチを選択するでしょうか。
タイウィン公は将来世代のラニスター“家”のため、征夷大将軍の座を奪うのでなく、その力を奪った北条家でしょうか、それとも、ベイロン・グレイジョイでしょうか。
ドッチだと思いますか？ロバートの反乱を振り返るタイウィンの最後の一言を参考に、ご自分で結論してみて下さい。
古代の権力争いを描いた『ゲーム・オブ・スローンズ』。
このような解説ブログでは歴史上の人物を例として多用するので、中学生の歴史のお勉強にもなるものに。
人質として豊臣家に嫁いだ2代目徳川秀忠の娘千姫。嫁ぎ先での娘の立場が悪くならぬようにと、その母親お江がどれほどまでに気を揉んだかは有名な話。
そのお江を比較にバカ親サーセイ
を紹介されれば歴史も上手に覚えられます。
歴史だけでなく、中学生の一番の興味事に対しても色々とためになる『ゲーム・オブ・スローンズ』。是非お子様の教材にどうぞ。
…と、色々と過激描写多発する番組を無責任推奨して締めくくります。
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